虫歯は老若男女問わず発症するものです。
特に10歳前後の子どもの口内で見られることが多いですが、高齢になっても発症のリスクはあります。
では、高齢の方の虫歯治療には、果たしてどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか?
今回はこちらの点について詳しく解説します。
高齢の方の虫歯治療におけるメリット
高齢の方の中には、体が不自由だったり、外出するのが体力的に辛かったりする方もいるかと思います。
しかし、虫歯が痛む場合は治療を受けなければいけません。
高齢の方の虫歯治療には、痛みなどを軽減できる以外にも、以下のようなメリットがあります。
・認知症予防になる ・誤嚥性肺炎を予防できる ・丈夫な身体づくりにつながる ・消化や吸収が良くなる |
各項目について詳しく説明します。
認知症予防になる
高齢の方の虫歯治療は、認知症予防につながります。
認知症には、アルツハイマー型と脳血管性の2種類があります。
アルツハイマー型認知症は、脳の一部が委縮することにより、物忘れなどが生じる病気です。
一方、脳血管性認知症は、脳の血管障害で起きる脳梗塞や脳出血によって起こる認知症です。
アルツハイマー型認知症を予防するには、食事の際にしっかり噛むことを意識し、刺激を脳に伝達させなければいけません。
そのため、噛むために虫歯を早期に治療することが求められます。
また、脳血管性認知症は脳の血管が硬化することで引き起こされますが、虫歯によって動脈硬化が進行していると発症のリスクが高まります。
したがって、こちらも虫歯を治療して予防につなげることが大切です。
誤嚥性肺炎を予防できる
高齢の方が虫歯治療を受けることで、誤嚥性肺炎の予防にもつながります。
誤嚥性肺炎は、名前の通り食べ物を誤嚥してしまうことで起こる肺炎です。
食べ物が食道ではなく気管に入ってしまった場合、通常はむせて気管から排出する反射機能が働きます。
しかし、高齢の方はこの機能が鈍っていることが多く、気管に入り込んだ食べ物を排出できないケースがあります。
その結果、引き起こされる肺炎が誤嚥性肺炎です。
一方、虫歯を治して咀嚼機能・反射機能を回復させることができれば、誤嚥性肺炎のリスク軽減が期待できます。
丈夫な身体づくりにつながる
高齢の方の虫歯治療は、丈夫な身体づくりにもつながります。
虫歯ができている場合、穴が開いて噛み合わせに影響が出ることがあります。
虫歯が重度にまで達すると抜歯が必要ですが、歯を失うと噛み合わせが乱れるリスクはさらに高くなります。
また、噛み合わせがずれると一部の歯や顎の骨・筋肉に負担がかかり、最終的には自律神経にまで影響を及ぼします。
しかし、虫歯を治療して噛み合わせが良くなると、左右の口周りの筋肉をバランス良く使うことができます。
その結果全身のバランスも整うため、体の不調症状は改善され、丈夫な身体づくりが実現できます。
消化や吸収が良くなる
高齢の方の虫歯治療には、消化や吸収が良くなるというメリットもあります。
虫歯や虫歯によって失った歯があると噛み合わせが悪くなり、食べ物を十分に噛み砕くことができません。
そのため、胃腸には大きな負担がかかります。
一方、虫歯を治療して噛み合わせが良くなれば、食べ物をしっかりと噛むことができます。
こちらは食べ物の十分な咀嚼、唾液の分泌量増加につながり、消化酵素の分泌も促進します。
結果的に胃腸の負担は和らぎ、栄養の吸収も良くなります。
高齢の方における虫歯治療のデメリット
高齢の方が虫歯治療を受ける際は、メリットだけでなく以下のデメリットも把握しておきましょう。
・疾患があると治療を進めにくい ・治療中にむせやすい |
疾患があると治療を進めにくい
高齢の方の中には、何らかの疾患を抱えている方も少なくありません。
このようなケースでは、虫歯治療が進めにくくなる可能性があります。
例えば、循環器疾患や心疾患、脳血管障害や糖尿病などの基礎疾患がある場合です。
基礎疾患がある場合、虫歯治療に使用する麻酔や薬が身体に悪影響を及ぼすことが考えられます。
そのため、治療の際はかかりつけの医師と歯科医師に連携を取ってもらい、慎重に進める必要があります。
治療中にむせやすい
高齢の方は、虫歯治療中にむせやすく、場合によっては危険を伴います。
高齢の方の場合、加齢に伴って嚥下(飲み込むこと)に必要な舌、喉周りの筋肉が衰えます。
そのため、気管に唾液や水が入る可能性が高まります。
虫歯治療では水を多用するため、著しく嚥下能力が低い方は前もって歯科医師に相談しておきましょう。
イスをあまり倒さない、バキュームの他に口内から水分を取り除く排唾管を併用するといった工夫をしてもらえることがあります。
まとめ
高齢の方であっても、虫歯治療を受けることは可能です。
治療を受けることにより、口内だけでなく、全身の健康を維持することにもつながります。
ただし、疾患がある方は、かかりつけの医師と歯科医師の両方に相談しなければいけません。
疾患のことを伝えずに虫歯治療を行ってしまうと、身体に重大な問題が生じる可能性があります。