医療費控除は、一定額を超えた医療費を支払った場合に、所得税や住民税の控除が受けられる制度です。
では、子どもの歯科治療にかかった費用のうち、親御さんはどの費用を医療費控除の対象にできるのでしょうか?
今回は、子どもの歯科治療費における医療費控除適用の有無について解説します。
子どもの虫歯治療費は医療費控除の対象になる
子どもの歯科治療としてもっとも一般的な虫歯治療にかかった費用は、大人と同様医療費控除の対象になります。
こちらは、虫歯治療が美容や予防のためではなく、健康維持のために必要な施術であることが理由です。
もちろん、親御さんの虫歯治療費も基本的には医療費控除の対象になるため、親御さんは自身の分と子どもの分をあわせて年間10万円を超えたときに申告ができます。
ちなみに子どもの虫歯治療については、段階によって治療内容が変わってきます。
まだ初期段階の虫歯では、削るなどの治療を行わず、フッ素を塗布して様子を見るのが一般的です。
また歯のエナメル質に穴が開いたら、虫歯を削って白いプラスチックの詰め物を行い、中程度の場合は麻酔を伴う虫歯治療を採用します。
さらに重度にまで進行した場合、歯の神経を取り除く根管治療が行われますが、根管治療も基本的には医療費控除の対象になります。
ただし根管治療の場合、自由診療かつ一般的な治療費の金額であることが控除の条件です。
例えば、子どもの根管治療後の被せ物作製において、一般的な歯科材料ではないものが使用される場合などは、医療費控除が適用できません。
小児矯正の費用も医療費控除の対象
小児矯正にかかった費用は、大人の矯正治療にかかった費用と比べて医療費控除の対象になりやすいです。
なぜなら、医療目的で必要と認められる場合に該当しやすいからです。
例えば大人の矯正治療では、「歯の見た目をキレイにしたい」という理由で治療を受ける方も多いでしょう。
しかし歯並びに大きな問題がなく、単純にキレイにしたいだけの場合、審美目的と見なされ医療費控除が利用できないことがあります。
一方小児矯正は、歯並びや顎の骨の成長を促し、改善されることが目的であり、審美目的にではないケースがほとんどです。
そのため、基本的には医療費控除の対象になります。
ちなみに小児矯正であっても、高校生以降の場合は審美目的と判断されることが多く、医療費控除の対象外になるケースが多いです。
フッ素塗布は医療費控除が適用される?
フッ素塗布も、代表的な子どもの歯科治療の一つですが、こちらは残念ながら医療費控除の対象にはなりません。
フッ素塗布は、予防を目的とした処置であり、健康維持のため必ず行わなければいけない治療とは言えないからです。
フッ素塗布は、名前の通り歯にフッ素を塗布する治療で、歯質を強化するとともに歯の再石灰化を促し、虫歯予防効果を発揮します。
乳歯は永久歯よりエナメル質が薄く、まだ溝が深いために簡単に虫歯になってしまいます。
そのため、フッ素を塗布して効率的に虫歯予防をするのは大事ですが、親御さんはこちらの費用について医療費控除を行うことはできません。
ただし、フッ素塗布には保険が適用されるため、それほど大きな金額になることは考えづらいです。
シーラントにかかる費用は医療費控除の対象?
シーラントも子どもの歯科治療としては一般的なものですが、こちらも予防目的の処置であるため、医療費控除の対象にはなりません。
シーラントは、奥歯の噛む面の溝をプラスチック樹脂で埋める施術です。
溝を埋めることで食べカスやプラークを溜まりにくくし、虫歯を防ぐのが特徴です。
またシーラントは医療費控除の対象外ですが、6~12歳の子どもに対して行う場合は保険が適用されます。
歯のクリーニングにかかる費用も医療費控除の対象外
子どもの歯のクリーニングにかかる費用についても、フッ素塗布やシーラントと同様医療費控除の対象外です。
子どもの歯のクリーニングは、大人と同様にプラークや歯石の除去を中心に行われます。
歯ブラシだけでは除去できない汚れを専門の器具で取り除くことで、虫歯や歯周病のリスクを減少させます。
加えて子どものクリーニングでは、年齢や歯の成長段階に合わせて予防処置を実施します。
ここでいうプラークや歯石の除去などは、虫歯や歯周病の予防に対する治療と判断されるため、医療費控除は適用されません。
ちなみに、子どもの歯のクリーニングを行う際は、歯科医師による歯磨き指導などもあわせて行うことがあります。
仮にクリーニングを行わず、歯磨き指導だけ受けた場合でも、その費用は予防のための費用であるため、医療費控除が認められません。
まとめ
子どもと大人の歯科治療費における医療費控除で異なる点は、子どもの方が矯正治療費を医療費控除の対象として認められやすいという点です。
その他の特徴については、大人であっても子どもであってもそれほど変わりません。
もし家族で歯科クリニックに通っているようであれば、親御さんは家族全員の歯科治療費、医療費控除適用の有無について把握しておきましょう。