歯周病は歯茎の腫れや赤み、出血などを伴う口内を中心とした疾患で、腰痛は腰のズキズキとした痛みが生じる疾患です。
一見、これらの疾患には何の因果関係もないように思いますが、実際は関連性があるとされています。
今回は、歯周病が腰痛を引き起こす原因などについて解説します。
歯周病と腰痛の関連性について
歯周病と腰痛の関連性は、つい最近のデータで明らかになったものです。
歯周病を発症している方は、そうでない方に比べて1.5倍も腰痛を発症しやすいということがわかっています。
歯周病は口内のトラブルを中心とした疾患ですが、脳梗塞や心筋梗塞、糖尿病などさまざまな全身疾患とも関連性があることで知られています。
また頭痛や肩こりといった身体の不調を引き起こすこともあり、このような歯周病が引き起こす症状の一つに腰痛も含まれています。
ちなみに、肉体労働やデスクワークなどを行っている方は、歯周病を発症したときの腰痛のリスクがさらに上昇します。
歯周病が腰痛につながる原因
歯周病の方が腰痛を発症しやすい原因としては、主に以下のことが挙げられます。
・噛み合わせの悪化
・姿勢の悪化
・体内への細菌の侵入
各項目について詳しく説明します。
噛み合わせの悪化
歯周病を発症すると、噛み合わせが悪化して腰痛を引き起こすことがあります。
歯周病の方は歯茎がブヨブヨになっていて、重度にまで進行すると歯が動揺することもあります。
さらに放置すると歯が抜け落ちることも考えられ、そうなると当然口内の噛み合わせは悪化します。
また噛み合わせが悪くなると、全身のバランスは悪くなり、肩こりや頭痛などとほぼ同じメカニズムで腰痛を発症することがあります。
姿勢の悪化
歯周病から来る姿勢の悪化により、腰痛を発症するケースもあります。
こちらは歯並びの悪化が前傾姿勢を引き起こし、腰にも影響を及ぼすという仕組みです。
歯周病によって噛み合わせや歯並びが悪くなると、舌のスペースを確保しにくくなることがあります。
このような場合、舌が落ちて気道を塞いでしまう可能性があるため、上を向いて気道確保を行います。
また前を見るときにも、首を曲げた状態で見るようになり、次第に頸椎に歪みが生じます。
頸椎がゆがむと、少しずつ腰に負担がかかるようになり、最終的には腰痛を発症します。
体内への細菌の侵入
先ほど歯周病はさまざまな全身疾患と関連性があるという話をしましたが、こちらは腫れた歯茎を通じ、全身を巡る血管内に侵入する可能性があるからです。
全身疾患の多くは、体内に悪い細菌が侵入することによって生じます。
また歯周病菌が全身に回ると、血管を詰まらせたり、炎症を引き起こしたりするため、腰痛のリスクも高くなります。
腰痛を発症することのデメリット
腰痛を発症すると、単純に痛みに悩まされるだけでなく、健康にも悪影響を及ぼします。
例えば、慢性的な腰痛は睡眠障害やストレスなどにつながり、全身の不調を招くことも考えられます。
また腰痛が慢性化すると、日常生活の動作が制限されることもあります。
持ち上げ作業、長時間の座位などが苦痛になり、生活の質は大きく低下します。
さらに、腰痛や趣味にも悪影響を与えます。
全身を使う作業の多くが難しくなり、生産性や楽しみが減少する可能性があります。
歯周病が治れば腰痛も治るのか?
歯周病の治療を受ければ腰痛も治るのかどうかは、ハッキリと断言することができません。
どういう経緯で腰痛を発症したのかについては、患者さんによって異なるからです。
例えば歯周病が原因で噛み合わせが悪化し、そこから腰痛を発症している場合、矯正治療など別の治療も必要になる可能性があります。
また体内を歯周病菌が巡り、疾患を発症したことで腰痛が出ている場合は、全身疾患の治療を受けなければいけないことも考えられます。
歯科と整形外科のどちらを受診すべき?
歯茎の赤みや腫れ、出血などの症状と、腰痛をほぼ同時期に発症したという場合は、基本的に整形外科よりも歯科クリニックへの通院を優先しましょう。
歯周病をはじめとする自覚症状がある場合、腰痛の有無に限らず、まずそちらを改善しなければいけません。
もちろん、歯科治療中もずっと腰痛に悩まされているという場合は、整形外科への受診を並行しても構いません。
ちなみにどちらのクリニックに通う場合でも、医師にはいつから症状が続いているのか、どのような症状が出ているのかをハッキリ説明しましょう。
歯周病を発症したからといって、必ずしも腰痛につながるとは限りません。
身体の筋肉や神経の異常など、まったく別の原因で発症していることも考えられます。
まとめ
腰痛を発症した方は、まさか歯周病が原因で発症しているなんて思いもしないでしょう。
しかし、歯周病が腰痛につながりやすいことは事実であり、実際に症例も存在します。
もちろん、腰痛の主な原因はもっと他にありますが、これらの関連性があることについては理解しておくべきだと言えます。
前もって把握しておくだけでも、初期対応を早くすることにつながります。