歯科クリニックで虫歯治療を受けた後は、治療箇所を塞ぐために詰め物や被せ物を装着します。
このとき、保険診療の治療では銀歯が使用されるのが一般的ですが、銀歯はさまざまなリスクを抱える材料であることを理解していただきたいです。
今回は、銀歯の概要と主なリスクについて解説します。
銀歯の概要
保険診療で使用される銀歯は、金銀パラジウム合金と呼ばれるもので、12%の金に銀や銅、パラジウムといった混ぜたものです。
主に詰め物や被せ物に使用され、型取りをして模型上で作製したものを虫歯の治療箇所に装着します。
銀歯のメリットとしては、治療費が安くなることや、ある程度の耐久性を持っていることなどが挙げられます。
またもっとも一般的な虫歯治療の補綴物であるため、症例数が多いというのもメリットです。
しかし実際は装着することによって生じるリスクが多く、当院を含め多くの歯科クリニックでは積極的に勧められることはありません。
銀歯の主なリスク5選
歯科クリニックで使用する銀歯には、主に以下のようなリスクがあります。
・二次虫歯のリスク
・見た目が悪化するリスク
・経年劣化のリスク
・金属アレルギーのリスク
・メタルタトゥーのリスク
各項目について詳しく説明します。
二次虫歯のリスク
銀歯を装着する場合、二次虫歯のリスクが高まる可能性があります。
二次虫歯は二次カリエスとも呼ばれるもので、一度治療した箇所が再び虫歯になってしまうというものです。
銀歯で二次虫歯が起こりやすい理由としては、金属の特性が関係しています。
銀歯は金属でできているため、毎日咀嚼することによって少しずつ変形していきます。
変形してできた隙間にはプラークが溜まりやすくなりますが、銀歯の下がどうなっているかはなかなか確認できません。
そのため、いつの間にか虫歯になってしまいます。
また銀歯は合金であり、どれだけ研磨しても表面には粗面になっていることが多いです。
さらに金属であることから静電気を発し、その静電気に吸い寄せられるようにプラークが付着しやすいとされています。
こちらも銀歯の二次虫歯リスクが高い理由です。
見た目が悪化するリスク
銀歯を装着すると、見た目が以前より悪化してしまうリスクも高まります。
なぜなら、天然歯の色とまったく異なる色をしているからです。
銀歯を詰めた部分は銀色をしているため、明らかに虫歯治療を行ったことがわかります。
そのため、治療の跡がコンプレックスになってしまうこともあります。
特に銀歯を装着した状態で会話をしたり、大きく口を開けて笑ったりした場合、ほぼ確実に銀歯を入れていることに気付かれます。
もちろん銀歯の本数が多ければ多いほど目立ちやすく、“何本も虫歯を治療している=不潔”というイメージを持たれる可能性もあります。
経年劣化のリスク
銀歯は自由診療の補綴物などと比べて、経年劣化のリスクも高いです。
銀歯は金属素材であることから、食事の際などには温度の影響を受けやすく、腐食する可能性があります。
もちろん、腐食した状態で、そのまま銀歯を使用し続けることはできません。
また長い間使用すると、歯に接着するためのセメントが流出し、銀歯の脱離を引き起こしてしまうこともあります。
このとき外れてしまった銀歯も、あらためて装着するために再治療を受けなければいけません。
金属アレルギーのリスク
金属アレルギーも、銀歯を語るにあたっては欠かせないリスクの一つです。
銀歯には複数の種類の金属が含まれていますが、これらは長期間口内に入れておくことで、金属イオンが溶け出す可能性があります。
このとき溶け出した金属イオンは、体内に少しずつ蓄積されていき、やがて金属アレルギーを引き起こします。
また金属アレルギーを発症すると、口内炎や舌炎といった口腔内の炎症だけでなく、口腔扁平苔癬という口内に線状や網目状の白い模様が現れる疾患も引き起こします。
さらに舌の味を感知する部分がアレルギーを起こすと、味がわかりにくくなり、食事の楽しみが半減することも考えられます。
メタルタトゥーのリスク
メタルタトゥーは、金属の詰め物や被せ物から溶け出した金属イオンが歯茎に付着し、変色させてしまうというものです。
具体的な症状は、歯茎の黒っぽい変色のみであり、金属アレルギーとは違って腫れや痛みなどの炎症症状は伴いません。
しかし、歯茎が黒くなることにより、口元の審美性は著しく低下します。
また一度色素が沈着してしまった歯茎は、自然にその色を回復させることがありません。
メタルタトゥーの原因となっている銀歯を口内から除去したとしても、変色部分はそのまま残ります。
まとめ
銀歯は多くの方に知られている補綴物ですが、虫歯治療後のリスクを考えると、決しておすめできるものではありません。
当院としては、やはり審美性・機能性ともに高いセラミックのインレーやクラウンをおすすめします。
もちろんセラミックの方が銀歯より費用は高額になりますが、コストパフォーマンスという点でいうと、決して治療費は高くないと言えます。