虫歯があることへの危機感が少ない方の中には、「痛みさえ我慢できれば良い」などと考えている方もいるかと思います。
しかし虫歯の痛みに耐えられたとしても、自然に治ることはありませんし、放置していると歯を失うリスクも高まります。
今回は、早めに虫歯を治療し、なるべく歯を多く残すべき理由について解説します。
なるべく歯を多く残した方が良い理由5選
手遅れになる前に虫歯を治療すれば、歯を多く残すことができます。
またできるだけ歯の残存数を増やすべき理由としては、以下のことが挙げられます。
・自分の歯で食事ができる
・健康寿命が延びる
・認知症のリスクが低下する
・栄養摂取能力を維持できる
・誤嚥性肺炎のリスクが低下する
各項目について詳しく説明します。
自分の歯で食事ができる
なるべく多く自身の歯を残すことにより、自分の歯で噛んで食事を摂ることができます。
自身の天然歯は、何物にも代えがたいものです。
セラミックなど、天然歯に限りなく近い素材の人工歯は存在しますが、審美性も機能性も天然歯には敵いません。
また自身の歯で食事をするということは、表情筋や咀嚼筋が鍛えられるということでもあります。
咀嚼筋が強くなれば、食材の硬さなどを気にせずに食事内容を選ぶことができますし、表情筋が鍛えられることで顔の表情は明るくなります。
さらに口元や輪郭が引き締まるため、美容効果も期待できます。
年齢を重ねるにつれて、人はどうしても頬のたるみやシワなどが目立つようになりますが、自身の歯で噛み続ければこのような悩みを抱えにくくなります。
健康寿命が延びる
健康寿命が延びることも、できるだけ自身の歯を多く残した方が良い理由です。
天然歯の残存数が多いほど、健康寿命が長くなるというデータがあります。
こちらはさまざまな根拠がありますが、具体的にはよく噛むことが脳への血流を増やすこと、歯があることで踏ん張りが効くため、転倒の予防につながることなどが理由です。
もちろん、虫歯や歯周病から来る疾患のリスクが軽減することも、歯を残すことで健康寿命が伸びる理由の一つです。
歯を失っているということは、虫歯や歯周病が進行していることを表していて、これらの疾患は歯を失っても完治することがありません。
特に歯周病については、完治しないだけでなく糖尿病などさまざまな全身疾患都の関連性が深いことで知られています。
認知症のリスクが低下する
虫歯を早めに治療し、歯をできるだけ多く残すことにより、認知症のリスクも低下します。
こちらは、歯で噛むという刺激が脳の海馬の働きを活性化させているからではないかと考えられています。
あるデータでは、歯が20本以上残っている方に比べて、歯が数本で入れ歯を使用しない方の認知症リスクは、1.9倍にもなるとされています。
また歯周病の原因となるポルフィロモナス・ジンジバリス菌は、認知機能を低下させてしまうと言われています。
つまり歯周病を予防し、歯を多く残すことで、認知機能の低下を予防できるということです。
栄養摂取能力を維持できる
虫歯や歯周病を早期に治療すれば、栄養摂取能力を維持することにもつながります。
虫歯の痛みがあったり、歯周病で歯がグラグラになっていたりする方は、食べられるものに制約が出ます。
例えば硬いものなどは、痛みの増幅や歯の脱落といったリスクがあるため、基本的には避けなければいけません。
一方、歯を多く残すことができれば、さまざまな食材から豊富な栄養を摂取できます。
肉や魚、野菜や穀類など、食材を選ばずに摂取できることは、食事から幸福感を得ることにもつながります。
また歯の残存数が多ければ、しっかりと食材を噛んで食べることができます。
よく噛むことによって消化吸収が良くなると、必要な栄養素を体内に取り込みやすくなります。
誤嚥性肺炎のリスクが低下する
誤嚥性肺炎は、誤嚥という気管に異物が入ったときに起こる反射機能が鈍ることにより、排出できなかったものが肺の中に入ったままになり、肺に炎症を起こす疾患です。
歯を多く残すことができれば、誤嚥性肺炎の発症リスクが低下します。
歯が残っていない方は、虫歯や歯周病をあちこちで発症していることが予想されます。
そのような状態だと、細菌が食べ物や唾液と一緒に気管に入り込み、誤嚥性肺炎を引き起こします。
ちなみに誤嚥性肺炎を発症すると、咳が多く出たり呼吸が苦しくなったりするだけでなく、高熱などの症状にも見舞われます。
さらに、一度発生した誤嚥性肺炎は簡単には治療できません。
日本においては、高齢者の方の死因の上位にも挙げられるため、非常に危険です。
まとめ
冒頭で触れたように、虫歯や歯周病を発症していることに対し、あまり危機感を持っていない方は多いです。
発症していても、多くの方は目をつぶっているということです。
しかし、実際は必ず治療を受けなければいけませんし、治療しなければ最終的には歯を失います。
歯をほとんど失った状態の老後生活は、不便なことばかりですので、どれだけ虫歯が多くても歯科クリニックを訪れましょう。