口内には嚢胞(のうほう)と呼ばれる袋状の病変ができることがあります。
また嚢胞にもさまざまな種類がありますが、口内にできるものは一般的に歯根嚢胞であるケースが多いです。
もちろん、歯根嚢胞は口腔外科治療で対処しなければいけません。
今回は歯根嚢胞の症状や原因、治療法について解説します。
歯根嚢胞の概要
歯根嚢胞は、歯の根っこの先端部分にできる袋状のものです。
歯茎にニキビのような白い病変が見られる場合、歯根嚢胞である可能性が高いです。
歯根嚢胞の内容物は膿であり、見た目は似ているものの、ニキビではありません。
ニキビの内容物は皮脂であるため、まったくの別物です。
また歯根嚢胞は決して珍しい疾患ではなく、多くの方に見られます。
特に歯髄が壊死した歯、過去に歯髄を除去した歯などに生じることが多いです。
歯根嚢胞の症状
歯根嚢胞はゆっくりと時間をかけて大きくなるため、自覚症状がなく、歯の治療などでX線撮影を行ったとき、偶然見つかるケースも少なくありません。
また歯根嚢胞が肥大化すると、骨の膨らみが見られることもあります。
初期の段階では無症状ですが、感染を起こすとズキズキとした痛みが出ます。
こちらの痛みは、食事や会話など日常生活におけるさまざまな行動に悪影響を及ぼします。
歯根嚢胞の原因
口内に歯根嚢胞が生じる主な原因は細菌感染です。
歯髄がある管状の部分内に何らかの理由で細菌感染が起こると、根の先端を通じて顎の骨にも感染が広がり、膿が溜まります。
また細菌が歯根へ侵入する原因としては、主に以下の3つが挙げられます。
・重度の虫歯
・不十分な処置
・歯の破折
各項目について詳しく説明します。
重度の虫歯
虫歯を放置すると、徐々に症状は進行し、次第に細菌は内部にまで到達します。
この時点で激痛が生じますが、それでも我慢しているといつの間にか神経が死滅し、痛みが消失します。
また神経が死滅するほど虫歯が悪化すると、細菌が歯の根を蝕んで炎症を引き起こし、歯根嚢胞を生じさせることがあります。
不十分な処置
重度の虫歯などによって神経が死滅すると、抜髄という神経を取り除く治療を受けなければいけません。
こちらは比較的難しい治療であり、経験と実績が豊富な医師であっても、成功率は80%程度しかないと言われています。
また抜髄が不十分だった場合、細菌が残ってしまい、再度活発化して歯の根に入り込むことがあります。
このとき入り込んだ細菌が歯根嚢胞を形成することも考えられます。
歯の破折
歯の破折は、転倒やスポーツなどで歯が折れてしまう症状であり、歯根嚢胞の原因の一つです。
破折した部分から細菌が侵入すると、歯の根を蝕んで歯根嚢胞を発症することがあります。
また歯に中心結節と呼ばれる突起がある場合は、突起部分が折れたときも細菌が内部に侵入します。
中心結節の破折や細菌感染は、歯の根が完成していない小学生や中学生で起こるケースもあります。
歯根嚢胞の主な治療法
歯根嚢胞を発症している場合、基本的には口腔外科治療を受ける必要があります。
具体的には根管治療で対応するケースが多いですが、根管治療が奏功しない場合や、根管治療ができない場合などは、外科治療によって嚢胞の摘出を行います。
原因歯の骨植が悪い場合には、嚢胞の摘出と同時に原因歯の抜歯を行います。
また原因歯の骨植が良い場合は、感染した歯根の尖端部の切除(歯根端切除術)とともに、嚢胞の摘出を行います。
歯根嚢胞の治療後はインプラント治療を受けられない?
歯根嚢胞が原因で抜歯を行った場合、その部分をインプラントでカバーしたいと考える方もいるかと思います。
しかし、場合によってはインプラント治療を受けられない可能性があります。
なぜなら、顎の骨が歯根嚢胞の大きさ分だけ不足するからです。
歯根嚢胞ができていた箇所は、レントゲン撮影をしても空洞に写ることからもわかるように、もともとあった顎の骨がない状態になっています。
インプラント治療は、顎の骨に人工歯根を埋め込む治療です。
そのため、人工歯根を安定させるには、土台となる顎の骨の十分な高さや厚みが必要となります。
歯根嚢胞の治療を行い、顎の骨がない部分があれば、インプラントが安定せず、治療に失敗するリスクが高まります。
ただし、顎の骨が回復すれば、インプラント治療を受けられる可能性はあります。
歯根嚢胞を取り除き、キレイに消毒をしたら、顎の骨は時間の経過とともに回復することが考えられます。
回復のスピードは人によってさまざまですが、一般的には抜歯後3ヶ月~半年程度である程度回復するケースが多いです。
まとめ
歯根嚢胞は自覚症状がほとんどないため、発症していることに気付かないケースも多いです。
しかし、嚢胞が形成されている時点で、すでに口内には何らかのトラブルが発生しています。
まずは歯科クリニックに通い、原因を突き止めて適切な治療を受けなければいけません。
また根管治療や口腔外科治療など、歯科分野の中では大掛かりな治療を受けなければいけないこともあります。