親知らずに対し、“抜歯するもの”というイメージを持っている方は多いかと思います。
しかし実際はそうとは限らず、状態によっては抜歯がされないこともあります。
また親知らずを口内に残すことには、いくつかのメリットもあります。
今回は、こちらのメリットの内容を中心に解説します。
親知らずを残すメリット6選
正常に生えている親知らずは、基本的に抜歯せず残すという選択肢が取られます。
また親知らずを残すことには、以下のようなメリットがあります。
・ブリッジの支台に使える
・部分入れ歯をかけられる
・歯のない部分に移植できる
・自然な噛み合わせを維持できる
・手術のリスクを回避できる
・痛みを回避できる
各メリットについて詳しく説明します。
ブリッジの支台に使える
状態の良い親知らずを残しておけば、ブリッジの支台として使用することができます。
ブリッジは、入れ歯やインプラントなどと同じく、歯を欠損した部分を補う治療の一つです。
欠損部の両サイドに生えている天然歯を支えにして、ダミーの歯を入れて審美性や機能性を回復させます。
このとき支えになる天然歯が支台と呼ばれるものです。
親知らずの手前の歯が何らかの理由で欠損した場合、欠損部の隣にある親知らずと、逆側の隣にある歯を支台として用います。
ただし、親知らずから離れた部分の歯を失った場合、親知らずの状態が良くても支台として使うことはできません。
部分入れ歯をかけられる
正常な萌出が見られる親知らずは、部分入れ歯のバネをかける歯としても使用できます。
総入れ歯の場合、歯茎に床と呼ばれる部分を吸着させ、口内に固定します。
一方、部分入れ歯はクラスプと呼ばれるバネを天然歯に引っかけて固定されるため、適用するには健康な天然歯を残しておく必要があります。
親知らずは、まっすぐ生えてさえいれば基本的に通常の天然歯と同じであるため、部分入れ歯を支えるための十分な強度を持っています。
歯の無い部分に移植できる
何らかの理由で歯を失ってしまった場合、その部分はカバーしなければいけません。
またこのとき用いられるのが入れ歯やブリッジ、インプラントなどの人工歯ですが、親知らずが残っていればそれを移植できる可能性があります。
具体的には患者さんの年齢が若く、失った部分の歯と親知らずの形状が近い場合で、なおかつ顎の骨などに問題がなければ、移植が可能になります。
親知らずを含む天然歯は、圧倒的な強度と機能性を持っています。
補綴物で言えばインプラントもかなりの高性能ですが、あくまでも人工歯であるため、天然歯よりは強度も機能性も劣ります。
つまり、天然歯を失った部分に天然歯を移植できれば、患者さんの口腔状態にはほとんど影響を及ぼさないということです。
親知らずは一番奥の奥歯のさらに奥に生えるため、失っても大きく歯並びや噛み合わせが乱れないケースが多いです。
自然な噛み合わせを維持できる
先ほど親知らずは、失っても歯並びや噛み合わせに影響を与えにくいという話をしました。
そうは言っても、やはり残っている方が自然な噛み合わせは維持しやすくなります。
また自然な噛み合わせを維持できるということは、口元の審美性がアップするだけでなく、食事を効率的に咀嚼することにもつながります。
美味しいものを食べるときの幸福感はとても強いと言われているため、よりその幸福感を大きくするためにも、状態の良い親知らずは残しておくべきです。
手術のリスクを回避できる
当然のことですが、親知らずを残すということは抜歯をしないということであり、手術に関するリスクを回避できます。
例えば親知らずを抜歯することにより、傷口から細菌が侵入し、感染症を起こしてしまう可能性があります。
また抜歯の際、親知らずの状態によっては、骨の内部の神経や血管を傷つけてしまうことも考えられます。
親知らずを残す場合、これらのトラブルが起こる心配は一切ありません。
痛みを回避できる
親知らずを抜歯する際は、局所麻酔が使用されますが、中には麻酔の効果が出にくい方もいます。
このような方は、治療中徐々に麻酔の効果が薄れ、痛みを感じるようになってしまう可能性があります。
逆に親知らずを残す場合、そもそも治療は行われませんし、麻酔の効果に関しても気にする必要はありません。
親知らずを残すデメリットは?
正常な親知らずを残すことにこれといったデメリットはありませんが、唯一懸念されるのはブラッシングが難しいという点です。
親知らずは口腔のもっとも奥に位置するため、適切なブラッシングを行うのが難しいです。
ケアが不十分だと、親知らずやその周囲において虫歯、歯周病のリスクが高まります。
まとめ
親知らずに対し邪魔な歯だという認識を持っている方は、すぐにでも抜歯をしたいと考えるでしょう。
しかし実際はブリッジや部分入れ歯、歯の移植などの際に重宝する可能性があるため、簡単に抜歯を選択すべきではありません。
特に他の歯を押したり、歯茎に炎症を起こしたりしていない親知らずは、基本的に残しておく必要があります。