歯を失った方のポピュラーな治療法である入れ歯には、保険診療で作成するものと自由診療で作成するものがあります。
またどちらを選択するかについては、各入れ歯の特徴を把握してから決定すべきです。
今回は、保険診療・自由診療の入れ歯のメリット・デメリットをそれぞれ解説します。
保険診療の入れ歯のメリット
ここでいう保険診療の入れ歯とは、主にレジンで土台を作製するレジン床義歯を指しています。
こちらのメリットは以下の通りです。
・安く短期間で作製できる
・修理しやすい
保険診療の入れ歯における最大のメリットは、やはり安く作製できるという点です。
部分入れ歯の場合、3割負担で5,000~10,000円程度、総入れ歯でも10,000~15,000円程度で作製できます。
また保険診療の入れ歯は、完成までにかかる期間も短いです。
一度歯を失うと、早めに対処しなければ歯並びが悪化しますが、保険診療の入れ歯であればそのような心配は少ないです。
ちなみに保険診療の入れ歯はレジンで作製されるため、修理がしやすく、トラブルが発生しても迅速に解決できます。
保険診療の入れ歯のデメリット
保険診療の入れ歯のデメリットとしては、主に以下の点が挙げられます。
・審美性が低い
・口内の違和感が出やすい
・口内でトラブルが起こりやすい
・食事の温度を感じにくい
保険診療の入れ歯は、クラスプと呼ばれる留め具の部分に金属を使用しています。
そのため、口を開けたときに金属部分が見えてしまうことがあります。
また保険診療の入れ歯で使用されるレジンは、耐久性があまり高くありません。
こちらの強度を高めるために、義歯床部分を厚くする必要がありますが、厚みが増すことによって口内の違和感が出やすくなります。
さらに、保険診療の入れ歯は歯に留め具がかかることから、食べカスが挟まりやすく、不衛生になりやすいです。
その上、入れ歯の内側にも食べカスが入り込みやすいため、メンテナンスを怠っていると虫歯や歯周病などのリスクは高まります。
ちなみに、保険診療の入れ歯を装着する場合、食事の温度を感じにくくなることもあります。
特に保険診療の総入れ歯は、上顎部分が分厚い義歯床で覆われてしまうため、食べ物の温度だけでなく、食感や味覚の感受性も低下しがちです。
これにより、意図せず火傷を負ったり、食事の楽しみが減少したりすることも考えられます。
自由診療の入れ歯のメリット
自由診療の入れ歯には、チタン床義歯やコバルトクロム床義歯、ノンクラスプデンチャーやマグネットデンチャーなどが該当します。
これらの入れ歯のメリットは以下の通りです。
・審美性が高い
・装着感が良い
・一人ひとりに合った入れ歯を作製できる
・残存歯に負担をかけにくい
自由診療の入れ歯は、クラスプを目立たないようにしたり、厚みを抑えたりすることができるため、審美性に優れています。
さらに使用する素材によっては、強度を維持しつつ、薄い入れ歯を作製できます。
そのため、食事や会話のときの違和感が少なく、快適に使用できます。
また自由診療の入れ歯は、患者さん一人ひとりに合ったものが作製できます。
なぜなら、型取りの段階から緻密に作製でき、素材や材質の種類も豊富であるからです。
例えば長く入れ歯を使用したい方には、レジンより頑丈な素材の入れ歯が向いていますし、審美性を極限まで高めたいのであれば、ノンクラスプデンチャーがおすすめです。
ちなみに、自由診療の入れ歯は残存歯への負担も少なくなります。
部分入れ歯の場合、残っている歯に金具をかけますが、自由診療の入れ歯は高い強度によってしなりを防ぎやすくなり、歯にかかる力を分散させることができます。
このことから、残った健康な歯への負担を減らすことが可能です。
自由診療の入れ歯のデメリット
自由診療の入れ歯はどれも非常に優れた機能性を持っていますが、以下のようなデメリットもあります。
・コストがかかる
・作製に時間がかかる
自由診療の入れ歯は、保険が適用されないため、作製費用は患者さんの10割負担になります。
そのため、保険診療の入れ歯と比べると確実にコストがかかります。
こちらは質の高い素材を使用することや、作製前の治療、細やかな調整に時間を費やすことなどが理由です。
もちろん、患者さんが徹底的に素材にこだわる場合、数十万円単位のコストが発生することもあります。
また自由診療の入れ歯はこだわりを持って作製されることから、完成までに時間がかかるケースも多いです。
作製後の修理や調整に関しても、保険診療の入れ歯と比べて時間がかかったり、難易度が高くなったりする可能性が高いです。
まとめ
「とにかく安く済ませたい」という理由で保険診療の入れ歯を選んだり、「とにかく良い入れ歯が欲しい」という理由で自由診療の入れ歯を選んだりするのは良くありません。
保険診療か自由診療かを決定する際には、双方のメリット・デメリットを事細かく把握することが大切です。
一つの理由だけで選んでしまうと、装着後に使いにくさを感じたり、想像以上に費用がかさんだりする原因になります。