子どもは生まれつき、身体のどこかに問題を抱えてしまうことがあります。
こちらを先天異常といい、子どもの口周りで発生する先天異常の一つに口蓋裂が挙げられます。
口蓋裂は、多くの赤ちゃんに見られる症状として有名です。
今回は、口蓋裂の概要や原因、リスクや口腔外科による治療方法などについて解説します。
口蓋裂の概要
口蓋裂(こうがいれつ)は、口の中の天井部分に割れ目があり、口の中と鼻の下がつながった状態になることをいいます。
およそ半数は口唇裂(こうしんれつ)と合併して起こり、その場合は口唇口蓋裂と呼ばれます。
口唇裂は唇が割れている症状で、唇だけにとどまるものや鼻の方までつながるもの、歯茎まで割れているものなどがあります。
口蓋裂、口唇裂のいずれも約500~600人に1人の割合で発生し、日本人に多い先天異常として知られています。
口蓋裂の原因
赤ちゃんに見られる口蓋裂については、実は詳しい原因がわかっていません。
ただし、多数の因子が関与して発生していると考えられています。
胎児の口蓋は妊娠12週頃、元になる部分が癒着することでつくられます。
口蓋裂は、こちらの時期に何らかの原因で癒合のプロセスがうまく行われなかったことが原因と考えられています。
まったくの偶然、母体の環境、薬剤、遺伝的因子など、小さな原因が積み重なった結果、一定の限界を超えたときに発生するという説が有力です。
しかし現在の医学では、遺伝的影響がどの程度関係しているかを判明させることができません。
ちなみに近年は母胎の超音波検査により、生前から口蓋裂の診断がつくケースも増えてきました。
口蓋裂の発生によるリスク
赤ちゃんの口蓋裂は、主に以下のようなリスクやデメリットにつながります。
・哺乳がしにくくなる
・上顎の発育障害や歯列不正
・滲出性中耳炎
各項目について詳しく説明します。
哺乳がしにくくなる
口蓋裂の赤ちゃんは、哺乳がしにくくなる傾向にあります。
こちらは親御さんにとっても、赤ちゃん自身にとってもデメリットです。
口蓋裂の場合、口の中の圧力を高めて母乳を吸い込む力が弱くなります。
そのため乳をうまく飲むことができず、母乳や通常の人工乳首が用いられた哺乳瓶では哺乳が不十分になります。
口蓋裂の赤ちゃん用に開発された人工乳首もありますが、うまく哺乳するには調整が必要です。
上顎の発育障害や歯列不正
口蓋裂の子の顎、特に上顎の発達は他の子どもよりも遅れがちであり、こちらは受け口につながるリスクがあります。
受け口は下顎が前に突出したような状態であり、発症すると噛み合わせや見た目の問題が生じます。
また口蓋裂の場合、高い頻度で歯並びの不正が出現します。
歯列不正も、同じく噛み合わせの問題や見た目のコンプレックスを引き起こす原因になります。
滲出性中耳炎
口蓋裂の子には、滲出性中耳炎という症状が発生しやすいです。
滲出性中耳炎とは、鼓膜の奥の中耳腔に滲出液と呼ばれる液体が貯留する疾患のことをいいます。
中耳腔内で炎症が起こると、中耳腔の細胞から炎症性の水が滲み出てきます。
こちらを滲出液といい、通常は中耳と鼻の奥をつなぐ耳管から喉の方に排出されます。
しかし耳管が何らかの原因で機能しないと、滲出液が排出されず中耳腔内にとどまり、耳の詰まった感じや難聴が生じる滲出性中耳炎を発症します。
口蓋裂の場合、軟口蓋にある耳管の調整を行っている筋肉の機能が傷害され、滲出性中耳炎を引き起こすとされています。
口蓋裂の治療法
口蓋裂は、口腔外科による治療で改善します。
口蓋裂を発症している赤ちゃんは、特徴的な開鼻声というものが生じます。
こちらは、鼻から抜けるような声であり、口蓋裂の症状を判断するためのものです。
開鼻声がある場合は、生後1~2歳で形成手術を行い、口と鼻の交通を閉じることによって開鼻声を改善します。
術後は正しい発音ができるように言語訓練を行い、乳歯が生え揃った後には定期的な歯科検診も必要になります。
しかし、この部分には骨や歯が存在しないため、審美的もしくは機能的な問題は引き続き存在することになるでしょう。
特に前歯周辺の異常は印象を大きく左右するため、放置することは良くありません。
そのため、成長に伴い、義歯の装着やインプラントの埋入などを検討します。
これらの治療を受けることで、審美面や機能面の問題も解決する可能性が高いです。
噛み合わせや歯並びに問題が見られる場合は、矯正治療の計画を立てることもあります。
ちなみに、義歯やインプラント治療を行いやすくするために、腰から骨または骨髄を採取し、上顎の骨の間隙に移植する処置もあります。
まとめ
口蓋裂は決して珍しい症状ではありませんが、発症することでさまざまなリスクが生まれます。
またハッキリと原因がわかっていないことから、事前に発症を防止することも困難です。
親御さんにできることは、口蓋裂の症状を放置せず、早めに歯科クリニックの医師に相談することです。
また状況にあわせて、口腔外科治療やその他の歯科治療などを受けさせるようにしましょう。