親知らずは奥歯の一番奥に生えるため、どのような状況になっているのかを確認しづらいです。
そのため、ある日急に痛みが出ることも考えられます。
では親知らずの痛みが出たとき、妊娠中であった場合には、どう対処すれば良いのでしょうか?
今回はこちらのポイントを中心に解説します。
妊娠中に親知らずが痛くなる原因
妊娠中は、親知らずの痛みが出やすくなります。
こちらは主に以下のようなことが原因です。
・ブラッシングがおろそかになりやすい
・唾液の性質が変わる
・女性ホルモンが増える
妊娠中の代表的な症状の一つに悪阻(つわり)が挙げられます。
悪阻は妊娠5週目あたりから起こる食欲不振、吐き気、嘔吐といった消化器系の異常です。
一般的に妊娠12~16週目前後で症状が消えると言われていますが、個人差が大きく、妊娠後期に悪阻が生じる妊婦さんも少なくありません。
悪阻が出ている場合、口内に歯ブラシのような異物を入れると嘔吐反射が起こり、満足にブラッシングできないことがあります。
このことから、親知らずの汚れが十分に除去されず、痛みにつながることが考えられます。
また妊娠中は、妊娠前と比べて唾液がネバネバした粘着性のものに変わります。
そのため、唾液が口内の汚れを洗い流す役割を果たせず、親知らずにも残ってしまった汚れが痛みを生じさせることもあります。
さらに、妊娠中は女性ホルモンの分泌量が増加します。
歯周病菌の中には女性ホルモンを好むものもあり、親知らずの周りで歯周病が発生すると、歯茎が腫れて痛みにつながることが考えられます。
妊娠中に親知らずが痛くなった場合の対処法
妊娠中にどうしても親知らずの痛みが我慢できなくなった場合、服用する薬や治療法には注意しなければいけません。
なぜなら、これらの治療が妊婦さんや胎児に悪影響を与える可能性があるからです。
具体的な方法としては、まずかかりつけの歯科クリニックを受診します。
妊娠中は母子への影響を考慮し、特定の薬の服用が制限されることもありますが、歯科クリニックであれば安全な鎮痛薬を処方してもらえます。
また妊娠中に歯科クリニックを受診する場合は、前もって現在通っている産婦人科にも連絡しておきましょう。
そこで服用しても問題のない薬を聞いておけば、歯科クリニックでスムーズに対応してもらえる可能性があります。
妊娠中に親知らずの治療はできる?
妊娠中でも親知らずの治療は不可能ではありませんが、内容は妊娠期間によって異なります。
妊娠0~15週目の妊娠初期に親知らずが痛む場合、痛みや炎症を和らげるために、歯科クリニックで歯茎の洗浄や歯のクリーニングが行われます。
妊娠初期は切迫流産のリスクがあるため、できる限り治療を控えるのが望ましいです。
また妊娠16~27週目の妊娠中期の場合、まっすぐに生えている状態の良い親知らずであれば、歯科クリニックで抜歯することが可能です。
ただし、痛みが出ている場合、親知らずが斜めもしくは横に生えている可能性もあります。
このような状況の場合、無理に抜歯をせずに妊娠初期のような応急処置を行います。
ちなみに妊娠28~40週の妊娠後期は、歯科クリニック、産婦人科の医師と相談した上で治療内容を決定します。
妊娠後期はかなりお腹が大きくなっているため、長時間仰向けになったり、座ったりすることが難しく、そのことを考慮した処置が行われます。
妊娠中にレントゲン撮影をしても大丈夫?
妊娠中に親知らずの治療を行う場合、レントゲン撮影をすることもありますが、こちらは基本的には安全です。
歯科クリニックで使用するレントゲンは口内を撮影するものであり、放射線量も医科のものに比べてごくわずかです。
また撮影場所はお腹から離れていますし、念のために防護エプロンをつけるため、胎児への影響はほとんどないと言われています。
もちろん、妊娠中はできるだけ影響をゼロに近づけるため、レントゲン撮影以外の方法を採用するなど考慮もしてもらえます。
妊娠前に親知らずは抜歯しておくべき
妊娠中でもある程度親知らずの治療は可能ですが、さまざまなトラブルのリスクを考えると、妊娠する前に抜歯しておくのが望ましいです。
特に生え方が悪いものや、歯茎に覆われているものについては、早めに抜歯すべきです。
生える向きが悪い親知らずはただでさえブラッシングが難しくなり、腫れやすいため、妊娠中に痛みが出る可能性が高いです。
また親知らずの一部もしくは大部分が歯茎に覆われている場合、親知らずと歯茎の間に細菌が繁殖する温床ができてしまいます。
残念ながら、こちらの部分は歯ブラシでキレイにできないため、妊娠前に抜いておきましょう。
まとめ
親知らずの抜歯は、麻酔が切れた後ある程度の痛みを伴います。
また人によっては顔の腫れや激痛を伴うこともあるため、状態が悪くても抜歯することをためらっている方は多いでしょう。
しかし、妊娠中に親知らずが痛くなると、治療には制約ができてしまいます。
そのため、制約なしで治療できるうちに処理しておくことが望ましいです。