口腔外科治療では、口内で発症した疾患について、名前の通り外科治療で対応します。
例えば口腔腫瘍の除去や外傷の治療については、主に口腔外科で行います。
また口腔外科で行われるその他の治療としては、抜歯も挙げられます。
今回は、抜歯をしなければいけないケースについて解説します。
抜歯をしなければいけないケース5選
以下に該当する場合、歯科クリニックの口腔外科治療を受け、抜歯をしなければいけません。
・重度の歯周病
・重度の虫歯
・歯の破折
・親知らずに異常がある
・矯正治療のスペースが足りない
各ケースについて詳しく説明します。
重度の歯周病
重度の歯周病を患っている場合、抜歯をしなければ対応できない可能性があります。
歯周病が進行すると、歯の周りの歯茎や歯を支えている骨が少しずつ溶けていきます。
最初のうちは自覚症状がないため、気付かないうちに進行していることが多いです。
また早期に対処できる歯周病が悪化した場合、膿が出たり、歯がグラグラ動いたりするようになります。
このような状態になった歯を残しておくと、噛み合わせなどに悪影響を及ぼしかねないため、抜歯をしなければいけません。
ちなみに、重度の歯周病を治療せずに放置した場合、抜歯をしなくても最終的に歯は自然と抜け落ちます。
重度の虫歯
重度の虫歯にかかっている方も、口腔外科治療による抜歯をしなければいけないことがあります。
虫歯が深い場合、菌によって周りの骨に炎症が起こり、痛みの原因になります。
その上新しく歯をつくっていくことができないため、顎の骨より下まで虫歯が進行している場合は、抜歯が選択される可能性が高いです。
また重度の虫歯は、歯の神経を死滅させることもあります。
このような歯の一部には、根っこの先に細菌が溜まり込み、病巣ができる場合があります。
小さい場合は根っこの治療を行えば改善できるかもしれませんが、大きい病巣の場合は抜歯をしなければ改善が見込めないことが考えられます。
歯の破折
歯の破折がある場合も、抜歯が選択される可能性があります。
歯の破折には、横に割れる水平的なものと、縦に割れる垂直的なものがあります。
水平的な破折に関しては、歯を残して対応できる可能性がありますが、垂直的な破折に関しては抜歯をしなければいけないことが多いです。
特に根っこのほうで起こっている縦の破折は、歯を残したまま対応するのが難しくなります。
親知らずに異常がある
親知らずに異常がある場合、口腔外科治療による抜歯で対応することがあります。
親知らずは、正式には第三大臼歯と呼ばれる最奥に生えてくる歯です。
生えてくる年齢も遅く、18歳前後にならなければ生えてきません。
また親知らずは、キレイにまっすぐ生えてくるとは限りません。
大抵は横に倒れて生えてきたり、まっすぐ生えてきたとしても、奥歯が歯茎に覆われたりしているケースが多いです。
このような異常のある親知らずは、歯茎の腫れや虫歯リスクの増大などにつながるため、なるべく早く抜歯することをおすすめします。
矯正治療のスペースが足りない
矯正治療を行う際、歯を移動させるスペースが足りない場合も、抜歯で対応することがあります。
具体的には顎が小さかったり、そのまま矯正すると口元が出てしまったりする場合に、抜歯が選択されるケースが多いです。
現代人は顎が小さい傾向にあります。
顎が小さい状態ですべての歯をキレイに並べようとしても、スペースが足りずに歯並びがガタガタになってしまうことがあります。
このようなケースでは、抜歯をして歯を並べるためのスペースをつくらなければいけません。
また抜歯をせずに矯正治療を行うと出っ歯になってしまう場合は、前歯の両端のエナメル質を0.25~0.5mmほど削ってスペースを確保します。
それでもスペースが足りない場合は、抜歯が選択されることがあります。
抜歯の一般的な流れ
口腔外科で行われる抜歯については、まず表面麻酔や浸潤麻酔を行うところから始まります。
表面麻酔は、浸潤麻酔の注射を行うための痛みを軽減させるため、歯茎に塗布する麻酔です。
麻酔が完了したら、次は歯周靭帯を切除します。
歯周靭帯は、歯と歯茎を結びつける組織であり、こちらを切除すると抜歯しやすくなります。
その後へーベルという器具で歯を骨から脱臼させ、鉗子という器具で歯をつかみ、ゆっくりと引き抜きます。
最後に、歯を抜いた箇所の掻破と止血を行います。
掻破は歯の根が腐っていたり、歯周病でグラグラになったりしていた歯の抜歯窩に残っている悪い組織を取り除く作業です。
止血に関しては、ガーゼを噛んで行い、血が止まりにくそうな場合は縫合することもあります。
まとめ
口腔外科治療では、歯やその周囲の組織に問題がある場合、他の治療の妨げとなる場合などに抜歯を行います。
しかし、歯科クリニックでは基本的に抜歯を用いない治療を優先して行います。
抜歯は天然歯を取り除く治療であり、失った天然歯は二度と元には戻らないからです。
そのため、患者さんは可能な限り抜歯をせずに済むように、日頃のデンタルケアなどを怠らないようにしましょう。