歯の外傷とは、簡単にいうと歯のケガのことであり、成人でも4人に1人が経験していると言われています。
また外傷をそのまま放っておくと、歯の審美性や機能性に支障をきたすため、必ず口腔外科治療を受けなければいけません。
今回は、歯の外傷の種類と治療法について解説します。
歯の外傷の種類と治療法
歯の外傷には主に以下の種類があります。
・破折
・動揺
・陥入
・脱落
・変色
それぞれの概要と主な治療法について詳しく説明します。
破折
歯の破折は、外傷による衝撃によって歯が折れたり、欠けたりしてしまうものです。
外傷による破折は、スポーツや交通時効、転倒など耐力を超えた衝撃が歯にかかることによって起こります。
上顎前歯部に多く見られ、特に学童期から青少年期の活動的な世代で起こりやすいです。
また歯の破折が起こった場合は、折れた部分を取ってから他を残す治療を行うのが一般的ですが、どうしても無理な場合はすべて抜歯することもあります。
破折の程度が大きくなければ、破折した部分をそのまま元の歯に接着できる場合もありますが、土台や冠のつくり替えが必要になることも考えられます。
ちなみに歯の上部である歯冠ではなく、歯根に破折が見られる場合は、基本的に抜歯をしなければ対処できません。
歯根破折は歯茎の内部で発生するため、自覚症状が出にくく、気がついたら状態が悪化しているケースがほとんどです。
動揺
歯の動揺は、外傷などの原因で歯がダメージを受け、グラグラと揺れている状態です。
乳歯から永久歯に生え変わるときは、誰もが歯の動揺を経験しますが、成人してから歯がグラグラ揺れるということは、あまり良い兆候とは言えません。
外傷がなかったとしても、歯周病が悪化していたり、咬合力が強かったりと、何かしらの問題は生じています。
また歯の動揺が軽度の場合は、外傷を受けた歯をなるべく安静にし、しばらく経過を観察します。
しかし、明らかに動揺が大きい場合は、その両隣の歯を固定した状態で様子を見ます。
また歯のみが動揺している場合は、1~2週間ほどの固定を行いますが、歯根破折が併発している場合などは、2ヶ月程度の固定が必要です。
歯茎のところで根が折れていたり、根が斜めに折れていたりすることが原因で動揺している場合は、抜歯を行うことも考えられます。
陥入
歯の陥入は、外傷を受けたことにより、顎の骨の中に歯が埋まってしまうというものです。
完全に骨の中に入り込んでいる状態は完全陥入といい、完全に骨の中には入り込んでいないものの、隣の歯と比べて短くなったように見える状態を部分陥入といいます。
歯が骨に入り込む際には、骨にかなりのダメージが与えられます。
特に完全陥入の場合、歯が丸ごと骨の中に入り込むため、出血や痛みは非常に強くなります。
また陥入が起こった場合の治療法としては、ダメージを受けた歯を正しい位置に戻し、周囲の骨の治りを待つために両隣の歯と6週間ほど固定する方法があります。
受傷した歯の神経や血管は切断されていることが考えられるため、固定した後日、神経の処置を行うことがあります。
ちなみにまだ永久歯の歯根が完成していない子どもの乳歯については、神経の治癒力を期待して経過観察を行います。
その後、神経に影響が見られるようであれば、根管治療で対応します。
脱落
歯の脱落は、外傷によって受けた衝撃が著しく強かったことから、歯が抜け落ちてしまうというものです。
脱臼ともいい、歯が歯槽骨から完全に抜け、歯根膜が断裂した状態を完全脱臼といいます。
歯根膜の一部が断裂し、歯が少し抜けかかっている状態は亜脱臼(不完全脱臼)と呼ばれます。
また完全脱臼の場合は、まず抜けた歯を生理食塩水で洗って保管します。
その後局所麻酔を行い、歯が脱落した歯茎の穴を確認した上で脱落した歯を戻し、ワイヤーやレジンを使用して固定します。
本来の歯の位置がわかりにくい場合は、隣り合う歯や噛み合う歯との位置関係などを考慮した位置に戻すことが多いです。
不完全脱臼の場合も、歯を元の位置に戻す必要があります。
完全脱臼と比較すると、元の位置への再現は容易ですが、完全脱臼と同じく固定期間は必要です。
変色
歯の外傷があったあと、少しずつ歯の色が変色してくることがあります。
こちらは神経の中の血管が損傷し、充血して内出血を生じたものと考えられます。
充血が治れば歯の色も回復してくることがありますが、数ヶ月して徐々に歯の色が黒っぽくなってきた場合、神経が死滅している可能性が高いです。
また変色だけでなく、根の周囲に病巣ができて歯茎が腫れてくることも考えられます。
外傷を受けた後、定期的に歯科クリニックを受診していれば、このような問題は早期に発見でき、根管治療などを受けられます。
しかし、根の周囲の病巣が大きくなってから気付いた場合、歯の保存が難しくなるおそれがあります。
まとめ
歯の外傷は、虫歯や歯周病などとは違い、本人が気を付けていても防ぎようがない部分があります。
そのため、外傷を受けるとどういった症状が出るのか、どのように治療するのかについては、事前に把握しておくべきだと言えます。
痛みに耐えられるからといって、外傷を受けた部分を放置していると、精神的にも身体的にも苦痛を伴います。