現在歯科クリニックで行われているインプラント治療は、60年近い歴史を誇ります。
こちらは患者さんの歯を失った部分に人工歯根を埋め込み、その上に人工歯を被せるというものですが、治療の前にはCTスキャンが用いられます。
今回は、インプラント治療で使用するCTスキャンについて解説します。
CTスキャンの概要
CTスキャンとは、歯科用CTと呼ばれる機器によって行われる検査のことをいいます。
歯科用CTは、さまざまな方向からX線を照射し、口内もしくは口腔周辺を撮影する機器です。
インプラント治療だけでなく、歯周病の進行具合をチェックしたり、親知らずを抜歯する前の診断を行ったりするときにも使用されます。
またCTには歯科用と医科用がありますが、これらは異なるものです。
医科用CTは寝台に患者さんが横たわった状態で撮影しますが、歯科用CTは立ったままもしくは座ったままの状態で撮影します。
さらに、歯科用CTは歯科用レントゲンとも異なるものです。
レントゲンの撮影は2次元の平面画像ですが、歯科用CTは3D画像であるため、よりリアルな患者さんの口内状況を把握できます。
なぜインプラント治療ではCTスキャンが必要なのか?
インプラント治療の安全性を確保するにあたって、CTスキャンはなくてはならない工程です。
なぜなら、CTスキャンによって顎の骨の状態を把握できるからです。
インプラント治療では、顎の骨に直接人工歯根を埋め込んで固定します。
そのため、骨の状態が悪いと人工歯根が安定せず、治療が失敗に終わってしまう可能性があります。
事前にCTスキャンを行っていれば、顎の骨の立体的な形、神経の位置や骨密度などの詳細なデータが取得できます。
こちらはインプラント治療の成功率や安全性を飛躍的に高めます。
ちなみに、CTスキャンはインプラント治療の前だけでなく、後にも行われるのが一般的です。
治療後のCTスキャンは、術前と術後における顎の骨の状態を比較するために行われます。
術後も骨に問題がないことが確認されれば、そのまま人工歯根が定着し、天然歯に近い歯を手に入れることができます。
歯科用CTには患者さんの負担が少ないというメリットも
歯科用CTによるCTスキャンには、インプラント治療の精度を高めることだけでなく、患者さんの身体の負担が少ないというメリットもあります。
直接切開をして骨の状態をチェックする場合とは違い、CTスキャンの照射時間はわずか数秒程度であり、痛みなどの心配もありません。
撮影された画像からインプラントの形状も決定できるため、トータルの通院時間を減らし、患者さんの体力的な負担を軽減します。
またCTスキャンではX線が使用されますが、歯科用CTは医科用CTと比べて被ばく量が少ないです。
具体的には、年間の被ばく限度量が医科用CTの1/10~1/100に抑えられています。
つまりCTスキャンは、安全な治療を提供したい歯科クリニック側、安全な治療を受けたい患者さん側の両方にメリットがあるということです。
CTスキャンを行わずにインプラント治療を受けるとどうなる?
もし事前にCTスキャンを行わず、インプラント治療を受けてしまうと、口腔周辺の組織においてさまざまなトラブルが発生します。
具体的には骨や神経、血管などにおけるトラブルです。
インプラント治療において非常に重要なのは、顎の骨のどの位置に人工歯根を埋入するかです。
埋め込む位置が悪いと、骨の中にある神経に触れてしまい、治療後の痛みや麻痺などが生じることがあります。
もちろん血管を傷つけてしまった場合、大量出血のリスクもあります。
前もってCTスキャンを行っていなければ、このようなトラブルが現実的に起こり得ます。
そのため、必ずCTスキャンを行った上でインプラント治療を行わなければいけません。
ちなみに、歯科クリニック側からCTスキャンを受けないことを勧められることはありませんが、自院に歯科用CTを導入していないところは存在します。
こういった歯科クリニックは、基本的に歯科用CTを完備している病院と連携を取っていることが多いです。
サージカルガイドを併用している歯科クリニックがおすすめ
歯科クリニックでインプラント治療を受けるのであれば、CTスキャンとサージカルガイドを併用しているところがおすすめです。
サージカルガイドは、人工歯根の角度や位置をより正確に再現するためシミュレーションをしたものをもとにマウスピースを作製し、ドリル位置を決定するというものです。
こちらはインプラント治療のアシストに用いられるもので、治療中もガイドの通りにドリルが使用できるため、迷うことなく人工歯根を埋入できます。
つまり治療の安全性、効率性を同時に高められるということです。
まとめ
インプラント治療を受ける歯科クリニックを決定する際、費用を重視するという方は多いかと思います。
もちろん、費用も重要な判断材料ではありますが、安さだけを求めてインプラント治療を受けるのは危険です。
やはりCTスキャンやサージカルガイドなど、治療の安全性を高めるための取り組みが充実していなければ、思い通りの仕上がりにならないことがあります。