歯科クリニックは、歯や歯茎だけでなく、他の口内組織の問題を解決する治療も取り扱っています。
例えば口腔外科は、名前の通り口内の外科的な施術であり、そのうちの一つに小帯切除術というものがあります。
今回は小帯の概要や異常の種類、小帯切除術の一般的な流れなどについて解説します。
小帯の概要
唇や頬の内側の粘膜と歯茎をつなぐ、筋のような部分を小帯といいます。
こちらは部位によって上唇小帯、下唇小帯、舌小帯、頬小帯の4つに分かれます。
上唇小帯は上唇、下唇小帯は下唇の位置と動きをそれぞれコントロールする役割を持っています。
また舌小帯は舌の位置や動き、頬小帯は頬の位置をコントロールするために必要な部分です。
正常な状態であれば、それぞれの小帯が上記の役割を果たしますが、これらに異常が生じるケースがあります。
小帯異常の種類と特徴について
小帯異常は主に上唇小帯、舌小帯、頬小帯において発生します。
それぞれの特徴について見てみましょう。
上唇小帯の異常
上唇小帯は上の唇と歯茎をつないでいますが、その付着する位置が高い場合、正中離開(せいちゅうりかい)という不正咬合を引き起こすことがあります。
正中離開は、簡単にいうとすきっ歯のことであり、上の前歯の真ん中に隙間が生じます。
また正中離開が自然に治ることはなく、放置すると虫歯や歯周病を発症したり、発音が悪くなったりすることが考えられます。
舌小帯の異常
舌小帯は、舌の裏側の真ん中にあるヒダです。
こちらが通常より短い場合、嚥下時に舌を前方に突き出すことしかできないため、正常な嚥下ができません。
また咀嚼や嚥下がうまくできない場合、脳神経の刺激が少なくなり、ホルモンが分泌されず意欲向上などが阻害されます。
さらに舌小帯が短いことで、舌を上顎に押し当てられないため、上顎が狭くなって歯並びが悪くなる可能性もあります。
頬小帯の異常
頬小帯は、頬の内側の粘膜から歯茎にかけて存在する小帯です。
頬小帯の異常は、上唇小帯や舌小帯を比べると少ないですが、異常が生じると第一小臼歯(4番目の歯)と第二小臼歯(5番目の歯)の間に隙間ができることが多いです。
こちらは正中離開とは少し異なりますが、歯と歯の間に隙間ができるという意味では同じです。
また頬小帯の位置が良くないと、虫歯治療の過程で必要な被せ物の型取りがしにくくなることも考えられます。
さらに、歯を失った方が入れ歯を作製するときにも、同じように頬小帯が邪魔になることがあります。
小帯切除術について
小帯切除術は、文字通り小帯を切除し、前述したような小帯異常を解決するための治療です。
一般的な流れとしては、まず小帯の周囲に表面麻酔を行った後、局所麻酔を行います。
次に小帯を引っ張り、固定した状態にしたら、小帯に切れ目を入れて硬い組織を切除します。
このとき、切除にはメスの他にもレーザーなどの機器が用いられます。
最後に止血を行い、切った部分を縫合すれば完了です。
縫合した部分については、術後1週間前後で抜糸が行われます。
ちなみに小帯切除術を受けてから2~3日の間は、傷口に痛みが生じやすいです。
また縫合した糸がチクチクと痛むこともあり、場合によっては食事や発音などに影響が出ることも考えられます。
しかし、治療内容に問題がなければ、強い痛みが長期的に続くといったことはありません。
あまりに強い痛みがある場合、小帯やその周辺の組織に異常が生じている可能性が高いです。
上唇小帯の切除は子どものときに行うのが一般的
上唇小帯付着異常については、1歳6ヶ月歯科検診などで指摘される機会が多いです。
しかし成長とともに正常な位置になることも多いため、すぐに手術を勧められることはほとんどありません。
手術に適した年齢については、個人差もあり一概には言えないものの、おおむね6~7歳頃の永久歯が生え始めてきた頃が一般的です。
早めに問題を解決したい場合は、予防的にそれより少し早い時期に行うこともあります。
小帯切除術の注意点
小帯切除術は、口腔内の粘膜を切開する外科手術です。
そのため、出血や術後の感染リスクはゼロではありません。
また術後は口内に傷口が残っているため、刺激の強いものや硬い食べ物の摂取は控えるようにしましょう。
治療に伴う痛みについては、短期間で治まりますし、少し痛みが強い場合でも通常は鎮痛剤で対処することができます。
ちなみに小帯切除術を受けた後は、再癒着防止のために舌のストレッチを行うことが推奨されています。
具体的には1日4回以上、主に上唇のストレッチを歯科医師の指示に従って4週間ほど行い、定期的に再癒着の有無を診察します。
まとめ
歯や歯茎以外にも口内の悩みを抱えている方は、迷わず歯科クリニックに相談しましょう。
今回解説した小帯異常など、歯科クリニックで改善できる症状は数多くあります。
また仮に歯科クリニックの専門外であったとしても、相談をして損をすることはありません。
どの診療科目でどういった治療を受ければ良いのか、歯科医師が丁寧にアドバイスをしてくれます。