虫歯と一口にいっても、その進行状況は人それぞれです。
ほとんど症状が見られない初期段階の方もいれば、すでに手遅れになっている方もいます。
また“手遅れの虫歯”という表現はよく使われますが、果たして手遅れとはどのような状態を指しているのでしょうか?
今回はこちらの点を中心に解説します。
手遅れの虫歯とは?
手遅れの虫歯とは、虫歯が進行しているがゆえに、一般的な治療ではすでに効果が期待できない状態を指しています。
ここでいう一般的な治療は、虫歯になっている部分を削り、詰め物や被せ物を装着するという治療です。
虫歯治療を行う際は、ほぼ無症状の初期虫歯を除き、歯を削ることになります。
歯を削ることで虫歯菌に侵された部分は口内から除去され、進行は停止し、補綴物を入れることで見た目もキレイになります。
しかし、手遅れの虫歯はこのような対処ができません。
発症から数年経過している場合、虫歯がこのような状態になることがあります。
具体的には2種類の“手遅れ”がある
一般的な虫歯治療ができないのが手遅れの虫歯の特徴ですが、こちらは正確にいうと歯の神経にとっての手遅れ、歯にとっての手遅れの2つに分けられます。
歯の神経にとっての手遅れは、神経を失うことです。
虫歯は初期段階の場合、ほとんど痛みを感じることがありませんが、進行していくにつれて少しずつ強くなり、やがて慢性化します。
慢性化しているということは、何もしなくても常に痛みを感じるということであり、このような痛みを自発痛といいます。
自発痛が出るようになった場合、神経を除去する合図と判断されます。
また歯にとっての手遅れは、歯を失うこと、つまり抜歯をすることです。
虫歯治療は主に削ることで感染部位を除去する治療ですが、歯を削れる範囲には限界があります。
具体的には、歯を削ったときに歯根の長さが10mmに満たない場合、抜歯で対応するしかありません。
ちなみに神経を除去して脆くなった歯にヒビが入った場合も、抜歯しなければいけない可能性が極めて高いです。
手遅れの虫歯で起こる症状
手遅れの虫歯では、前述の通りまず自発痛が起こります。
こちらは激しい痛みであり、日常生活に大きな支障が出ることも珍しくありません。
また重度にまで虫歯が進行すると、鼻に膿が溜まってしまうことがあります。
鼻と歯に関連性はないように思いますが、上顎の奥歯は副鼻腔に近いため、実際は無関係ではありません。
虫歯が手遅れになっている場合、副鼻腔から虫歯菌が侵入し、鼻に膿が溜まったり、副鼻腔炎になったりする可能性があります。
さらに手遅れの虫歯は、発熱や嘔吐など口内以外の症状も引き起こします。
このとき骨髄に虫歯菌が侵入すると、顎の骨を腐らせてしまい、骨髄炎という病気を発症することも考えられます。
ちなみに、歯が溶けてなくなってしまうことも、手遅れの虫歯における症状の一つだと言えます。
虫歯が手遅れになる前に気付くべきサイン
虫歯の症状=痛みというイメージが強いため、痛みがなければ虫歯を発症していないと考える方も少なくありません。
しかし、こちらの考えは間違っています。
痛み以外にも以下の症状を見逃してしまうと、気付いたら手遅れの状態になっているかもしれません。
・しみる感覚がある
・食べ物が詰まりやすい
・歯が変色している
冷たいものや甘いものなどを口に入れたとき、歯がしみるような感覚がある場合、ある程度虫歯が進行している可能性があります。
また痛みがなくても、特定の場所ばかりに食べ物が詰まったり挟まったりする場合、中程度の虫歯が疑われます。
虫歯が形成されると、歯に穴が開いたり隙間ができたりするからです。
さらに歯が黒っぽく変色したり、歯に白い斑点が見られたりする場合も、すでに虫歯の進行は始まっていることが考えられます。
手遅れと決めつける前にまずは通院しよう!
虫歯が手遅れの状態になっている場合、可能な治療はかなり限定されます。
それでも、患者さん自身で手遅れと決めつけるのはいけません。
虫歯は10年以上放置していても、まだ治療できる可能性があります。
例えば、すでに歯冠と呼ばれる歯の上部がボロボロになっていたとしても、歯根が元気であれば細菌を除去した後、キレイな被せ物を装着できるかもしれません。
また歯が手遅れの状態だったとしても、汚染された歯を抜歯した後、ブリッジやセラミック、入れ歯などで見た目と咀嚼機能を回復できます。
もちろん、長い間歯科クリニックに通っていなかった方が、治療に通うのはとても勇気のいることです。
治療費も高額になるかもしれませんが、何もしないよりは行動する方が良いです。
まとめ
歯や歯の神経において、一般的な治療ができない病変などが見られる場合は、手遅れの虫歯だと判断できます。
ただし、手遅れとはいっても、一切治療ができないというわけではありません。
歯科クリニックでの治療により、虫歯の進行を食い止めたり、口内環境の悪化を防いだりすることは可能です。
そのため、どのような状況でも必ず歯科クリニックには通わなければいけません。