虫歯で歯がボロボロになった方、歯周病の症状が末期にまで進行した方は、ほとんどの天然歯を失ってしまう可能性があります。
また歯がなくなると、食事が摂りづらくなるだけでなく、発音も満足にできないようになります。
今回は、歯がないことによる発音への影響について解説します。
歯がないことによる発音への影響6選
天然歯のほとんどを失ってしまうと、以下のような発音への影響が出るようになります。
・サ行が発音しにくくなる
・ラ行が発音しにくくなる
・バ行、パ行が発音しにくくなる
・歯茎音が発音しにくくなる
・全体的な滑舌が悪くなる
・コミュニケーションが取りづらくなる
各項目について詳しく説明します。
サ行が発音しにくくなる
歯がない方は、サ行の発音が以前より悪くなるケースが多いです。
特に前歯がほとんどない方は、サ行を発音するときに隙間から空気が漏れてしまい、正しい発音ができません。
具体的には、シュッという音がサ行に混ざり、他の音に聞こえてしまうことが考えられます。
ちなみにこのような現象は、前歯の中心にある中切歯だけでなく、側切歯や犬歯を失った場合でも起こり得ます。
ラ行が発音しにくくなる
奥歯を失ってしまった方に多く見られるのは、ラ行が発音しにくくなるという現象です。
こちらはサ行の発音が不明瞭になるのと同じで、発音する際に息が漏れてしまうことが原因です。
また奥歯がない場合、ラ行だけでなく“キ”や“シ”、“チ”なども発音しにくくなります。
具体的には、これらの音がすべて同じように聞こえることが多いです。
ちなみにキは“木”、シは“詩”、チは“血”など単体の言葉として伝えなければいけないことも多いため、発音しづらいと非常に苦労します。
バ行、パ行が発音しにくくなる
バ行やパ行など、濁音・半濁音がある音についても、歯を失っている方は発音しづらくなります。
これらの音を出す際は、必ず上下の唇が触れることになります。
しかし歯がない場合、うまく唇を閉じることができず、隙間から音が漏れてしまうことがあります。
その結果、“ハ”や“ファ”など別の音として相手に届いてしまうことが考えられます。
歯茎音が発音しにくくなる
ほとんどの歯を失ってしまった場合、歯茎音はすべて発音しにくくなる可能性が高いです。
歯茎音(しけいおん)は、名前の通り歯茎との関連性が深い音です。
歯茎から硬口蓋の粘膜と舌が接触することにより、こちらの音を出すことができます。
具体的には“タ”や“ダ”、“ナ”などが該当します。
歯がない方は、これまで歯があったときのように舌を歯茎に当てると、歯茎音をうまく発せられないことがあります。
なぜなら、舌を当てる部分には歯茎だけでなく、歯の裏側も含まれているからです。
つまり舌を当てる部分の一部が欠損していることから、これまで出していた音とは違う音になってしまうということです。
全体的な滑舌が悪くなる
歯の大部分を失うことにより、全体的に滑舌が悪化することも考えられます。
こちらは歯がないことが原因で、うまく舌を動かせなくなるからです。
すべて歯を失っていれば、逆に舌の障害となるものがないため、舌を動かすこと自体には特に問題が生じません。
しかし一部の天然歯だけ残っている場合、それらが傷害となって舌の動きを阻害します。
特に歯を失って歯並びが大幅に悪化した方は、舌の動かしにくさを感じやすく、滑舌も悪化しがちです。
コミュニケーションが取りづらくなる
歯を失ったことによって発音や滑舌が悪くなると、相手とのコミュニケーションが取りづらくなります。
例えば自身が伝えたい言葉とは違う言葉として伝わってしまったり、相手に何度も聞き返されたりすることが考えられます。
またこのような状況が続くと、会話の際に自信がなくなり、声が小さくなってさらにコミュニケーションには支障が出やすくなります。
最終的に人と会話をするのが億劫になり、自分から話しかけることをやめてしまったり、話しかけられても冷たい態度で接してしまったりする可能性があります。
入れ歯を装着してもすぐ発音は良くならない
歯がない方が入れ歯を装着したとしても、すぐに発音が良くなるとは限りません。
入れ歯を装着したばかりの頃は、その状態に慣れていないことから、装着前と同じように発音に影響が出る可能性が高いです。
また分厚い入れ歯を装着している場合や、入れ歯と天然歯との間に不要な隙間がある場合も、発音はしづらくなります。
逆にセラミックなどのクラウンで歯を失った部分をカバーすれば、歯がない状態よりは発音が良くなる可能性が高いです。
まとめ
歯を失うことでデメリットはたくさん生まれますが、メリットは何一つとしてありません。
食事はしにくい上に発音も不明瞭になるため、通常通りの生活を送ることは非常に難しいと言えます。
また虫歯や歯周病の悪化は、歯の欠損など口内トラブルだけでなく、全身疾患にもつながるおそれがあります。
そのため、治療が億劫であっても、なるべく早いタイミングで歯科クリニックを訪れなければいけません。