歯並びが悪い状態は、生まれつき歯の生える位置がズレていることにより引き起こされるものだと思われがちですが、実は後天的に歯並びが悪くなることもあります。
後天的に歯並びが悪くなるのは筋肉が関係していることも多いのですが、歯並びと筋肉にはどのような関係があるのでしょうか?
歯並びと筋肉の関係について、解説します。
筋肉と歯並びの関係
人間の歯は、上下の歯が噛みあうようになっています。
前歯は少しズレていますが、奥歯は上下で同じ場所の歯が合うようになっているのです。
歯並びが正しければ、噛み合わせも正常になっていますが、中には歯並びにズレがあって噛み合わせもズレているという人もいるでしょう。
噛み合わせは、顎の健康や咀嚼筋の機能に大きな影響を与えます。
正しくない噛み合わせは、さまざまな機能に悪影響を及ぼすのです。
歯は、頬や唇の力で内側に押され、舌の力で外側に押されています。
力が釣り合っていれば歯並びは正常になりますが、どこかの力が弱ると歯並びが悪くなるのです。
正しくない噛み合わせになっていると、顎関節が痛んだり顎が動かしにくくなったりします。
それだけでなく、咀嚼が困難になったりすることもあるのです。
また、噛み合わせが悪いことで顎関節症になってしまうケースもあります。
顎関節症は軽度なら顎を動かした時に音が鳴るだけですが、重症化すると痛みも伴うようになります。
顎変形症など、さらに重篤な病気の原因となることもあるため、少し噛みにくいだけだと思って放置してはいけません。
顎の筋肉の状態が嚙み合わせに影響している場合には、筋機能療法によって、顎の筋肉を強化して改善することができます。
筋機能療法とは、口周辺の筋肉を鍛えるためのトレーニングです。
特定の筋肉を的確に鍛えることができるトレーニングであるため、噛み合わせのバランスを整えて顎の健康を促進することが可能です。
筋機能と噛み合わせの関係を改善するには、筋機能療法以外にも矯正治療で適切な噛み合わせにすること、咬合調整をすることなどが必要なケースもあります。
また、日常生活におけるストレスによって噛み合わせが悪化することもあるため、ストレスの管理なども必要です。
筋機能療法が必要な人の特徴として、まずは飲み込む際に異常嚥下癖などの問題があるという方が挙げられます。
異常嚥下癖とは、食べ物を飲み込む時に口の周りの筋肉に不自然な力が加わったり、不必要な場所に力が入ったりしている状態のことを指します。
異常嚥下癖があると、上顎前突をはじめとしたさまざまな不正咬合の原因になってしまうため、注意が必要です。
普段から鼻呼吸ではなく口呼吸になっている人も、トレーニングを受けた方がいいでしょう。
鼻疾患があり、鼻呼吸ができない状態の場合でも、口呼吸を続けず、耳鼻科で治療を受けましょう。
鼻呼吸が少しでもできる場合は、口呼吸をやめて鼻呼吸に切り替えて呼吸するための筋肉を鍛え、意識しなくても鼻呼吸ができるようにしてください。
筋機能療法とは?
筋機能療法は、 MFT(Myofunctional Therapy)とも呼ばれるトレーニング方法で、口の周りの筋肉や舌などを対象として、筋力や機能性を向上させることを目的としています。
筋機能療法は発音の改善に有効であり、筋力を強化することで発音の正確さと流暢さを向上させることができます。
発声練習や音声指導を組み合わせることで、発音の問題を改善できるのです。
なお、トレーニングであるため、継続する必要があります。
基本的なアプローチ方法は、顎、口、舌の筋肉を鍛えることです。
どれか一か所ではなく、全体的に鍛えなければなりません。
口や周囲の筋肉を鍛えることで、発音に関係している筋肉の筋力や柔軟性が向上し、音を正確に発音することが可能となります。
継続してトレーニングを続けることも重要で、個別にプログラムを作成するとさらに効率よく改善できます。
受け口だけではなく、発音の改善にも筋機能療法はおすすめです。
発音に悩みがあるという人は、一度試してみてください。
主な筋機能療法のトレーニング方法として、まず舌の先をつけておくスポットポジションの位置を覚えるというものがあります。
また、正しい飲み込み方を覚えるためのスラープスワローという方法もあります。
スラープスワローは、舌を上顎に吸い上げてストローを噛み、口の横からスプレーで注入した水を吸い込むというトレーニングです。
噛む力と舌を持ち上げる力を鍛える、バイトホップというトレーニング方法もあります。
バイトホップは、舌を上顎に吸い上げて奥歯を噛み締め、口を大きく開けて音を出します。
まとめ
口の周りの筋肉が弱っていると、歯並びがズレて噛み合わせが悪くなってしまいます。
噛み合わせが悪いと顎関節症の原因になり、さらに悪化して顎変形症になることもあるのです。
口の周りの筋肉を鍛えるには、MTFとも呼ばれる筋機能療法を行ってみましょう。
発声練習や音声指導なども組み合わせると、さらに効果的です。
口周りの筋肉などを鍛えたい場合は、筋機能療法に取り組んでみてください。