歯科治療を受ける際は麻酔を使用することが多いのですが、中には麻酔に適していない人もいます。
麻酔に適していない人とは、麻酔が効きにくい人や麻酔を受けることで具合が悪くなる人などを指しますが、麻酔が効きにくい場合はどのような原因があるのでしょうか?
麻酔が効きにくい原因について解説します。
麻酔が効きにくい原因①治療部位
歯科治療で麻酔をかけるのは、歯を削ることで神経に刺激が伝わるケースです。
したがって、麻酔は神経に対してかけることになります。
しかし、歯の神経は歯の中央部にあり、周囲は硬い歯に囲まれているため、直接麻酔を到達させることはできません。
歯科治療の麻酔は、一般的に浸潤麻酔という局所麻酔で、歯の近くの歯茎に麻酔薬を注入して歯の根の先から神経まで浸透させていきます。
しかし、神経まで麻酔薬が届きにくいケースがあるため、麻酔が効かないケースがあるのです。
麻酔が効かない原因として、まずは治療する場所の問題があります。
特に下顎は上顎よりも骨の密度が高いため、麻酔が効きにくくなります。
さらに奥歯の場合、分厚い骨により周囲が覆われているため、下顎の親知らずを抜歯するときは、伝達麻酔など別の麻酔法でなければ痛みを抑えられないこともあるでしょう。
また、歯の痛みが強かったり、強い炎症が起こっていたりする場合には、麻酔をかけても歯の周辺組織が酸性になっていて効きづらいことがあります。
麻酔薬は、周辺組織のpHが酸性に傾いていると効きづらくなるという性質があるため、炎症や痛みがあると効果が弱まってしまうのです。
抜歯予定の歯の周辺に強い腫れがある場合は麻酔が効きづらいため、抗生物質を服用して腫れが引いてから抜歯することになります。
麻酔が効きにくい原因②体調
歯科治療を受ける際、過去に痛い思いをしていたり恐怖を感じたりしたことから緊張していると、麻酔が効きにくいことがあるでしょう。
子どものときの経験から、歯科治療に対し恐怖を抱くケースがよくあります。
大人になるにしたがって恐怖心が薄れる人もいますが、怖いままだという人も珍しくありません。
不安を抱いたまま治療を受けると、和らいでいる痛みに対しても敏感に感じてしまい、実際よりも痛みが強いように思えてしまうのです。
緊張が強いほど痛みに対して敏感になってしまうため、治療を受ける前に深呼吸をするなど、できるだけリラックスしておきましょう。
また、治療を受ける前に歯科医師や歯科衛生士に不安があることを伝えておくと、麻酔法を変更するなどの配慮をしてもらえるかもしれません。
体調不良時に治療を受けた場合も、麻酔が効きにくくなったり、普段は気にならない違和感が強くなったりすることもあるでしょう。
気のせいだと考えて、無理をして麻酔を受けて治療すると、予想外の症状が出てしまうことがあるため、体調不良のときは無理をしないことが大切です。
麻酔が効きにくいと、麻酔薬の量を増やす可能性があり、その場合には治療後に気分が悪くなることもあるため、気をつけなければなりません。
体調が悪いときは隠さず歯科医師に相談してください。
その結果、やめた方がよいと判断されたら、体調が回復してから治療を受けるべきです。
麻酔が効きにくい原因③薬やアルコール
継続して抗うつ薬や鎮痛剤を服用していたり、日常的に多くのアルコールを摂取していたりすると、麻酔が効きにくくなってしまうことがあるため注意が必要です。
麻酔薬のように体内で作用する化学物質は、肝臓で酵素が分泌されて分解されることになりますが、分解する成分が多ければ酵素は増えていきます。
アルコールや服用する薬剤の成分も、肝臓で分泌される酵素によって分解されるものであるため、普段から摂取している場合は酵素が増加します。
その状態で麻酔薬を使用しても、酵素によって素早く分解されてしまうため、効果は長く続かず、効きにくくなってしまいます。
風邪薬やサプリなども、肝臓の働きで分解される成分が含まれている可能性があるため、歯科医師に伝えたうえで治療を受けてください。
よくいわれる、「麻酔が効きにくい体質」とは、基本的に生まれつきのものではありません。
いつも効きにくいのであれば、服用している薬やアルコールなどが原因でしょう。
体質によって、麻酔の効果に差が出るということはないものの、過去に麻酔が効きにくいことがあった場合には、事前に伝えておくと安心です。
体調や治療する場所に炎症などが起こっているために効きにくいという場合は、後で治療を受け直しましょう。
まとめ
歯科治療では麻酔を使用することが多いものの、中には麻酔が効きにくい人もいます。
麻酔が効きにくい体質というものはなく、原因となるのは歯に起こっている痛みや炎症、治療する場所、当日の体調や不安感、さらには普段服用している薬やアルコールなどです。
炎症などは先に治療し、治療する場所に関しては麻酔法を切り替えることで対処できます。
体調や不安感については、相談したうえで後でやり直すことになるでしょう。