妊娠中は、普段できることができなくなるケースがあります。
歯科治療においても同様で、今まで何の問題もなく受けられた治療が受けられなくなることがあるのです。
歯科治療では麻酔やレントゲンが必要になることもあります。
妊娠中に麻酔を打ったりレントゲン撮影を行ったりすることは問題ないのでしょうか?
妊娠中でも麻酔の使用やレントゲン撮影ができるのか、解説します。
妊娠中は麻酔を使っても大丈夫?
虫歯の治療をする際は、虫歯に感染している部分を削り、感染部分を除去します。
虫歯の状態によっては歯を削る際に痛みが生じることがあるため、この場合には、先に麻酔をかけなければなりません。
妊娠前は麻酔をかけられることに何の問題もなくても、妊娠中となると、「お腹の中の子供に影響がないか」と不安に思う人もいるでしょう。
実は、歯の治療に使用する麻酔に関しては、特に胎児への影響はありません。
したがって、妊娠中であっても問題なく麻酔をかけられます。
歯科治療で使用する麻酔は濃度が低く、使用料もごく少量です。
効果がある時間も短く体への影響も軽微です。
危険性はほとんどなく、体内に吸収された後に胎児まで届くことはなく、途中で分解されます。
麻酔に含まれているエピネフリンという成分は、血管を収縮させる働きがあります。
使用した際に心臓の動きが少しだけ早くなることがあるため、体に負担がかかっているのではないかと不安になる人もいるでしょう。
しかし、歯科治療で使用される麻酔に含まれるエピネフリンの量はごくわずかで、約8万分の1に希釈されています。
そのため、使用してもほとんど影響はありません。
中には、麻酔の影響を心配して、麻酔なしで歯科治療をしてほしいと希望する人もいます。
しかし、麻酔をかけずに治療すると激しい痛みを感じることがあるため、おすすめできません。
痛みのために、体にかかる負担がかえって大きくなってしまいます。
また、麻酔にアレルギーがあるという方もいます。
アレルギーがある場合には、対象となる成分が含まれない麻酔を使用することになるでしょう。
麻酔のアレルギーがある場合には、事前に歯科医師に伝えてください。
以上のとおり、虫歯の治療では麻酔をかけた方が、体への負担は小さくなります。
ただし、麻酔を打った時に具合が悪くなったことがある場合には、事前に相談してください。
妊娠中のレントゲンについて
妊娠中の歯科治療における不安は、麻酔だけではありません。
レントゲンに関しても、不安に思う人がいるでしょう。
しかし、レントゲンも特に悪影響はありません。
妊娠中に放射線を浴びると、胎児が育たなかったり奇形になったり、あるいは精神発達遅滞が起こったりするというデータがあります。
しかし、放射線は一定以上の量でなければ、影響はありません。
影響が出る放射線の量と影響の内容は、妊娠してからの時期によって異なります。
妊娠3週目までに100mSV以上の放射線を浴びると、胎児の成長に影響が出るといわれています。
妊娠4~12週は、100mSVの放射線を浴びた場合に、胎児が奇形になる確率が高くなるようです。
10~27週の間は、120mSV以上の放射線を浴びると胎児の精神発達が遅滞する恐れがあるといわれています。
放射線の量が50mSV以下なら、どのタイミングで浴びても影響は特にないというデータもあります。
しかし、放射線は通常、どのくらい浴びることがあるのでしょうか?
日常生活の中で浴びる放射線は、年間でおよそ2.5mSVです。
先述した胎児に影響が出る放射線量よりも大幅に少ないため、日常生活の中で放射線が原因となり、胎児に影響が出ることはまずありません。
レントゲンの放射線量は、日常生活の中で浴びる放射線量よりも少ないです。
そのため、胎児へ与える影響はほとんどないと考えていいでしょう。
レントゲンにはアナログ撮影とデジタル撮影があり、アナログ撮影で歯科治療のように小さなレントゲンを撮影した場合の照射量は、1枚当たり0.04mSVです。
デジタル撮影であれば、1枚当たり0.01mSVとごくわずかです。
また、レントゲン撮影をする際は、分厚い防護服を着たうえで行います。
放射線量がもともと少ないうえ、防護服によって守られるため、胎児にはほとんど届かないのです。
特に影響はないとはいっても、不安に思う人は少なくありません。
治療を受ける前に歯科医師に不安を伝えておけば、できるだけ麻酔やレントゲンを使わないよう配慮してくれるでしょう。
ただし、体への負担も考えて、最小限は使用することになると考えられます。
どうしても必要な場合には、何のために使用するのか、使用しなければどんな影響があるのか、考えられる影響は何かをきちんと説明したうえで、治療を行います。
まとめ
妊娠中に麻酔やレントゲンを使用すると胎児に悪影響がある、と考えている人は少なくありません。
万が一のことを考えて治療を受けるのをやめようとする人もいますが、麻酔は濃度も低く量も少ないため、胎児に届く前にほとんどが体に吸収され、悪影響がある成分も含まれていません。
レントゲンも、放射線の照射量はごく僅かなので、胎児にも母体にも影響はありません。
ただし、不安な場合には、安心できるまで相談しましょう。